高橋 正典

真剣に考え抜き、やり抜く力

高橋正典さんは、東京都中野区に生まれ、バンドブームの波もあり、やんちゃな青春時代を過ごしていた。その面影は今も残っている。

不動産との出会いは、様々な経験を経てからのことであった。当初は不動産会社に就職し、その後は今でも勢いのある建売販売の会社で活躍していた。この時点で、不動産取引と建築、開発を経験している。

そのような中、2006年に彼の人生の転機となる法律が公布された。住生活基本法である。

それまで、住宅に関する法律としては「住宅建設計画法及び住宅建設五箇年計画」が最上位にあった。それは戦後の住宅不足から、国民の住生活を適正な水準にするための「建設計画」であった。

それが一転、ストック重視となり、住生活の安定や質に重きをおいた「住生活基本法及び住生活基本計画」への政策転換がなされたのだ。

そこで、彼は不動産という業のあり方を見つめなおし、海外の不動産取引の仕組みなどを自力で勉強し始めた。そして「消費者からの信頼」の大切さを痛感したという。

それが「バイヤーズスタイル」誕生のきっかけである。38歳で独立し、買い手側の視点に立つエージェント型企業を目指したのだ。いかにして消費者からの信頼を得られるか、彼は真剣に考え抜いた。そして取り組み始めたのが「住宅履歴」である。

「自分たちが扱い、消費者の手に渡る財がどのような財なのか、情報化されていないのはそもそもおかしい」

自社で仲介する物件のすべてに住宅履歴を付帯することをマストとして、さらに不動産業界内での住宅履歴の普及に力を入れ始めた。現在も一般社団法人住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会の理事として、普及活動に取り組んでいる。

その後、さらなる理想を追求し、価値住宅株式会社を立ち上げた。

彼の活動はメディアからも注目され、特に業界誌や業界メディアでは名前を見ない日はないほどだ。連日のようにセミナー登壇もこなし、著書も多数ある。自己研鑽も怠らず、現在は大学院で論文執筆に取り組んでいる。

「今の住宅は、在宅医療に向いていません。これからの時代、住宅を社会保障の視点で捉えていくことが大切だと思います」

彼の関心は、不動産取引の正しい姿から、そこで暮らす人たちの健康や医療にまで広がりを見せている。

考え抜き、やり抜く力。

タガヤスの原動力となる力を持ち合わせた仲間である。