空き家問題を自分事・地域事へ

一般社団法人タガヤスでは、令和5年度の空き家対策モデル事業(国土交通省)の採択をいただき、2つの事業を進めてきました。

何回かに分けて、その概要についてご紹介していきたいと思います。

1つ目の事業は

「空き家発生未然抑制のための空き家対策 一気通貫モデルの構築と検証及び理解・普及ツール作成事業」というものです。

この取り組みの背景には2つの問題意識がありました。

問題意識 その1

空き家から発生する問題は、その物件のコンディションや置かれているシチュエーション、地域の特性などから個別性が高く、対症療法がとられがちである。しかし、今後世帯数が減少し、空き家が増加し続けると、個々の問題への対症療法だけでは到底追いつかない。空き家問題の全体像を把握し、将来発生し得るリスクをにらんだ網羅的な対策を行う必要があるのではないか。

問題意識 その2

空き家が増加し、トラブルが多発するようになると、個別性の高い個々のトラブルの通報や苦情が行政に寄せられる。すると、それだけで行政はパンクしてしまい、本来検討すべき、行うべき網羅的な対策が持続性を持って行えなくなるのではないか。

この2つの問題意識への対策としては、まずは空き家所有者がきちんと問題意識を持って管理すること、そして地域全体が空き家問題を地域事として意識し、地域で対応できることは地域で対応していくことであると考えています。

たとえば、夜遅くに子供が一人で公園にいたら、それを見かけた大人は不審に思って声をかけるでしょう。これは、子供は夜遅く一人で出かけてはいけないということが家庭内でも話され、教育現場でもそのように指導されるので、ある意味、常識としてそのような意識を持つことができているからです。

しかし、家が空いた状態で放置されていることについては、余程老朽化している、数が多いなどと、一定の危機感を刺激しない限り、あまり意識することはありません。これは、人と住まいの関係や、不動産と資産形成に関する教育が学校でも行われず(直近では資産形成に関しては始まっているようですが)、家庭内でもそのような話をする機会が少ないからです。

このような状況下で育ってきた大人たち(私を含め)に、「座学で学びましょう」と呼びかけても、関係業界の方は呼応したとしても、本当にお届けしたい地域の方々に参加いただくのは難しいでしょう。

そこで、座学ではなく、地域の中で友人、近隣住民などと一緒に遊びながら学び、家庭に帰ってからも親子でその話題を共有できるようなツールを開発したいと考えました。

これにより誕生したのが「空き家スゴロク」「解説ブック」「空き家対策一気通貫マニュアル」です。詳しくはこちらをご覧ください。

「空き家スゴロク」と「解説ブック」は、地域のワークショップや行事などで活用するツールです。

「空き家スゴロク」では、サイコロの目によってコマを進め、止まった箇所にはいろいろな空き家問題にまつわるイベントが用意してあります。それを参加者が一体となって考えていきます。

空き家問題にまつわる各イベントについては、「解説ブック」でわかりやすく解説しています。

「空き家対策一気通貫マニュアル」では、空き家問題を網羅的に捉えること、自分事・地域事として捉えることを中心に、少し専門的に解説しています。行政の空き家対策の担当者の方や地域の活動団体の方々の参考書として活用していただければと思っています。

令和5年度は、これらのツールを使った地域ワークショップまでは実施できませんでしたが、令和6年度から展開していく予定です。また、ワークショップのコーディネーターの育成も進めていきます。

次回は、当事業で検討した「空き家情報スタンダード」についてご紹介したいと思います。これは、一般の流通物件とは性質の異なる空き家の場合、需要者側に対してどのような情報を発信すればよいかを調査し、まとめたものです。

一般社団法人タガヤス
代表理事 小沢理市郎